AI時代の泳ぎ方

AI時代のリスキリング論

tom's eye 80. 自家用車の未来②

前回、AIを使って、ドライバーをいかにアシストするかがテーマになると述べたが、

一言で言うと、クルマは、「移動の最適化」に向けて進化する

そのテーマを大別すると、①ナビゲーションの進化、②運転アシスト領域の進化、③快適な移動空間の実現に分かれる。

ナビゲーションの進化…・より詳細な渋滞情報、道路コンディション情報などの予知的情報を加味し、目的地までいかに最短時間で快適に移動するかで進化

運転アシスト領域の進化…自動駐車システムの進化、曲がる、追い越しなどの高度な情報感知と操作がいる場面でのアシストの進化。反射神経が衰えた老人をいかにサポートするかもテーマになるだろう

快適な移動空間のカスタマイズ…ドライバーのストレスを下げたり、快を増幅する五感を使った快適空間やサービス。また、高速道路の完全自動運転時のドライバーと乗客の快適な過ごし方もテーマになるだろう

 

①、②はこれまでのクルマメーカーの技術の延長線上でAIを使った進化が求められる。

 

一方、③に関しては、人間の快・不快はどう生まれるかといった気分のマーケティングが必要だ。

 

日常生活の一端としての移動環境、移動空間をいかに快適にしていくかという発想が求められ、人間の一日の行動とその中における移動の役割や位置づけビッグデータでホリスティックに分析、可視化し、クルマという移動の箱に新たな付加価値を付けていく作業が必要だ。

 

また、個人個人のライフスタイルがあるわけで、いかに一人一人のニーズに合ったアシストをしてくれるのかも鍵になる。

 

    

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tom's eye 79. 自家用車の未来

​自動車の完全自動運転はいつ頃実用化するか。

 

レベル1からレベル5まであるが、レベル5=完全自動運転(加速・制動・操舵を全てシステムが自動で行われ、ドライバーが全く関与しない状態)で、

テスラモーターズイーロン・マスク氏は、実現は、なんと2017年後半と答えている。これは少々ブラフが入っていると思うが、

先ごろ、ホンダはレベル4(ドライバーが制御を再開する必要がある場合を除いて、ほとんどの運転状況において、車両がドライバーに代わって運転操作を行うこと)を2025年までに実現を目指すと発表した。(2017年6月)

 

つまり、ほぼ完全自動運転は、10年以内で実用化ということだが、

ここで注意しなければならないのは、クルマはそうあっても、

各国の法整備、インフラ整備がそこまでに追いつかないだろうということだ。

 

世界各国事情はまちまちであろうが、全国津々浦々で完全自動運転を解禁とは到底思えない。

 

その中で、一番実現が考えられるのは地理的限定

例えば、高速道路や銀座に限り、完全自動運転OKなどというやり方だ。

 

こうした近未来の環境で、マーケティング的に一番認識すべきポイントは、

いずれにしても、人間のドライバーが必要だということ。

 

一台のクルマで完全自動運転が許された道路とそうでない道路を跨いで運転するには、人間のドライバーが必要だからだ。

 

ということは、

一つは、自家用車の使用者は、当面、自分がドライバーであり続けなければならず、

二つめは、タクシーなど商用車も人間が必要で、人件費というコストは当分必要ということを意味する。

 

一部で、将来、自家用車が必要なくなるという議論も喧しいが、それは遠い未来の話で

ウーバーが普及しても、他人に乗せてもらうというコストはかかるわけで、

自家用車の所有のメリットがなくなるというわけではない

 

また、当面人間がドライバーとして乗車するという前提で考えると、

その人間の負担をいかに軽減するかという方向で自動運転、いや、AIは進化していくだろう。

 

AIを使って、人間をいかにアシストするかが技術開発のテーマであり続けるわけで、

どんどんAI化して、個人個人の生活をアシストしていくスマホと同じ発想でマーケティングしていくべきだろう

 

       

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tom's eye 78. ​一億総監視社会

昨今の企業の従業員に対する守秘管理、コンプライアンスがどんどん高次元になっている

 

友人から具体的に聞いた話だが、社員の在宅勤務など働く場所が自由になる代わりに、パソコンで使う情報は全てクラウド管理。

ダウンロードは許されない。

ケータイ/スマホもノートPCも、万一紛失した場合の必罰が半端ない。

中途退職者が社内の極秘情報やノウハウを持ち出さないよう徹底的に対策を打つなど、

情報管理に本当にピリピリしている。

 

また、スマホGPSが配備されることで、社員の移動もガラス張り。

昔横行したカラ出張や私用タクシーなどはもうできない(笑)

 

これらは何を意味するのか?

 

一つは、企業の価値が、情報そのものにシフトしていること。

 

もう一つは、人々の行為に匿名性がなくなりつつあること。

 

元々、企業での全ての行為に責任が伴うというのは当たり前ではあったのだが、

それがテクノロジーの進化によって可視化されるようになり

窮屈な社会になりつつあること。

 

一億総監視社会へと着々とひた走っている感じ。

 

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​tom's eye 77. セブンプレミアムは、食品業界のSPA化を促進

セブンプレミアムセブンイレブンのPB=プライベートブランド)が、

1兆5千億の売上げを目指すという記事を見て思った。

 

コンビニ対食品メーカーの関係で見ると、確かに王様と奴隷の感はあるけれど、

PBがどんどん強くなる構図は、衣料品のSPA化の構図と一緒。(ユニクロH&Mなどのビジネスモデルのこと)

 

生活者に近いリテイルがニーズのある商品を読み解いて、それをメーカーにOEM発注するのは時代の流れか。

 

但し、生活者ニーズを読み取る癖のないリテイル百貨店や書店などはいまだにメーカー任せであり、衰退していく。

 

第4次産業革命で生き残る企業の鍵は、幅広い顧客接点を持つか否か

そのビッグデータを使って、未来の顧客ニーズを読み取る力があるかどうかだ。

 

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tom's eye 76. AIの意思決定の動きが外から見える装置が必要

藤井四段が一世を風靡している将棋界、そして、チェス界、囲碁界と

いずれもAIが人間を制する世の中となった。

 

こうした中、アルファ碁を開発したデミス ・ハサビス氏は、 6月4日 日経新聞で、

「​これからのAIは、用途を限定したAIではなく、様々な課題をこなせる汎用AI

AGI=Artificial General Intelligence

の開発が課題になる。」と述べている。

 

確かに、将棋も囲碁も一つの単一なタスクで優劣を競うゲームだ。

 

これからは、マルチタスクの処理を迅速に合理的に処理できるAIの開発の時代に入る、いや入っているということか。

 

自動運転車などは、その恰好な題材なのだろう。

 

そのハサビス氏がもう一つ言っていたのは、

「人間の脳の動きは、MRIを使って視覚化できるが、AIにも暴走を防ぐためには、意思決定の動きが外から見えるこうした装置が必要。」

と述べている。

 

まさに、tom’s eye 75. 「AIのブラックボックスを理解する人間が価値が上がる」で指摘したのと同じ問題意識だな。

 

AIの意思決定の可視化が今後の課題ということか。

 

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tom's eye 75. AIのブラックボックスを理解する人間の価値が上がる

6月25日放送のNHKスペシャル人工知能 天使か悪魔か 2017」は、色々な意味で示唆を受けた番組だった。

番組前半部分の将棋のプロ棋士 羽生3冠の発言で、「もしかしたら人間の頭で考えたものは局所的に過ぎない。その外にはもっと広い銀河が広がっている。」

これが、人工知能と対戦して感じた彼の感想。

 

一方、この春、佐藤天彦名人を破ったポナンザの開発者の山本一成さんは、「人工知能は、どう考えてこの結論を出したのかわからないという域にまで達している。正直言って、恐ろしい時がある。」という発言も興味深かった。

 

番組では、人工知能の思考がブラックボックスになっていることが恐ろしさを助長しているとしていたが、その通りで、

であれば、今後AIに何故この意思決定をしたのかという説明能力を身につけさせれば、人類にとってはより親和性が増すのではないか。と、瞬間的に思った。

 

一方、その翌日の26日に、同じくプロの最年少棋士14歳の藤井四段が、増田四段を破って、29連勝という前人未到の記録を達成した。

 

天才少年現るということで、マスコミのフィーバーぶりが物凄いが、筆者が注目したのは、深浦九段が新聞にコメントした藤井君の強さの秘訣。

 

「彼は、桂馬の使い方が独特で、コンピュータ将棋の感覚に似ているような気がする。コンピュータ将棋の研究を始めたとのことだが、その感覚が体に身についてきているのが今までの棋士にない強さの原因ではないか。」いう趣旨のことを述べており、ピンときた。

 

つまり、筆者はこう解釈する。

 

藤井君の凄い所は、人工知能が繰り出した今までの常識にない指し手が、どうやって編み出されたのか、そのブラックボックスの部分を、彼の脳の中で理解し、ある程度解明してるのではないか。

あるいは、そういう態度が今までにない強さとして指し手に現れているのではないか。

 

そうか。これが将来のコンピュータと人間の関係の一つなんだ。

何らかの目的に関して、WIN-WINに関係しあい、その都度都度の意思決定を相互に高め合う

それがAIとの有力な付き合い方一つなのかもしれない。

 

これからはAIの出した意思決定の意図=ブラックボックスを読める人間の価値が上がる

 

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tom's eye 74. AIと人間の決定的な違い

「​AIと人間の違いは、情動があるかないか

情動とは生き残りたい存在したいという欲求

情動は、アルゴリズムに落とし込めないもので、脳をコンピュータに接続しても、置きかわりにくい。

その力がより重要になるこれからは、むしろ意識して鍛えなければならない。」

 

以上が、有名なロボット学者である大阪大学大学院教授 石黒 浩さんが ハーバードビジネスレビュー2017年5月号『知性を問う AI時代の価値とは何か』で述べていたこと。

 

このあたりは、この tom’s eyeの49~51「生き抜く力とは」 で述べていたことと符合する。

筆者のこのブログの一つのテーマでもあったので、思わず手を打った。

 

石黒氏が、もう一つ述べていたので面白かったのが、

 

「将来、ほとんどの人間が仕事から解放されるだろう

人生を学習と仕事の二つに分けるとすれば、今後,、

学習の比率が八割、仕事が二割と大きく逆転するのではないか。

究極的に肉体を提供する仕事が一切なくなれば、全ての人間が学習だけに専念し、哲学者に変わる。」

 

なるほど。

生涯学習時代の到来』か。

 

筆者もそんな感じがしている。

 

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