6月25日放送のNHKスペシャル「人工知能 天使か悪魔か 2017」は、色々な意味で示唆を受けた番組だった。
番組前半部分の将棋のプロ棋士 羽生3冠の発言で、「もしかしたら人間の頭で考えたものは局所的に過ぎない。その外にはもっと広い銀河が広がっている。」
これが、人工知能と対戦して感じた彼の感想。
一方、この春、佐藤天彦名人を破ったポナンザの開発者の山本一成さんは、「人工知能は、どう考えてこの結論を出したのかわからないという域にまで達している。正直言って、恐ろしい時がある。」という発言も興味深かった。
番組では、人工知能の思考がブラックボックスになっていることが恐ろしさを助長しているとしていたが、その通りで、
であれば、今後AIに、何故この意思決定をしたのかという説明能力を身につけさせれば、人類にとってはより親和性が増すのではないか。と、瞬間的に思った。
一方、その翌日の26日に、同じくプロの最年少棋士14歳の藤井四段が、増田四段を破って、29連勝という前人未到の記録を達成した。
天才少年現るということで、マスコミのフィーバーぶりが物凄いが、筆者が注目したのは、深浦九段が新聞にコメントした藤井君の強さの秘訣。
「彼は、桂馬の使い方が独特で、コンピュータ将棋の感覚に似ているような気がする。コンピュータ将棋の研究を始めたとのことだが、その感覚が体に身についてきているのが今までの棋士にない強さの原因ではないか。」いう趣旨のことを述べており、ピンときた。
つまり、筆者はこう解釈する。
藤井君の凄い所は、人工知能が繰り出した今までの常識にない指し手が、どうやって編み出されたのか、そのブラックボックスの部分を、彼の脳の中で理解し、ある程度解明してるのではないか。
あるいは、そういう態度が今までにない強さとして指し手に現れているのではないか。
そうか。これが将来のコンピュータと人間の関係の一つなんだ。
何らかの目的に関して、WIN-WINに関係しあい、その都度都度の意思決定を相互に高め合う。
それがAIとの有力な付き合い方一つなのかもしれない。
これからはAIの出した意思決定の意図=ブラックボックスを読める人間の価値が上がる。