AI時代の泳ぎ方

AI時代のリスキリング論

​tom's eye 106. これからは消費者に近い企業が勝つ。これは自明の理だ。

セブンイレブンのPB商品は、既に1兆円を超えている。(2016年度売上げが1兆1500億円)

かつてそこに納入するブランドのメーカーを担当していた筆者は、メーカーの方たちが、コンビニやスーパーのPBブランドが幅を利かせることに頭を悩ませていたのを目の当たりにしていた。

しかし一方で、「PB商品は、私たちメーカーのナショナルブランドのような品質とブランド力がない」とうそぶいていたのも事実だ。

しかし、「棚割りの権利は小売り側にある。だから、ウチの商品の品質の方が良くても、我慢せざるを得ない」と。

 

それから時がたち、何が起こったかというと、PB商品の勢いは停滞するどころか、ますます幅を利かせ始めている

品質やブランド力=信用力が格段に高まり、消費者が積極的に手を伸ばし始めているからだ。

今セブンではどのナショナルメーカーよりも安いカップラーメンを113円(税抜き)で売っている(定価での話)

 

PBには、品質力やいわゆるブランド力がない。だから伸びないだろう。といメーカー側の希望的観測は見事に覆されたわけだ

 

そしてアメリカでは、アマゾンがネット通販によってこれを実践し始めている

乾電池、赤ちゃんのお尻ふき、旅行ケースなど。

最初はブランド力の大していらない最寄り品からだが、これがどんどん多ジャンルに進出するのは見えている。

 

今アメリカでは、メーカーは静かなる死を迎えるしかないとも言われている。

 

このことは何を意味するのか。

 

消費者と接点を持っている企業が勝つということだ。

 

IT企業はその頂点にいるとされている企業だが、中でもアマゾンは、アップルやフェイスブックなどよりも成長余力が高いと言われている。

それは、生鮮食品も含めて、あらゆる業態で消費者、顧客との接点を持ち始めているからだ。

 

アマゾンは今や、あらゆるモノの売り買いに手を出し、エコシステムを変えつつあるが、その競争力の原点は、カスタマー・オブセション。

すなわち徹底した顧客志向だ。

 

かつて筆者は、日本での最終小売り戦争はアマゾン対セブンになるだろうと書いたが(Tom’s eye 93)、そこにメーカーやIT企業の名はない。

 

ここまでくれば、消費者との接点を持つ企業が優位に立つというのは自明の理だろう。

 

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​tom's eye 105. 老人は何故お金を溜め込むのか

老人は何故お金を溜め込むのかについてずっと考えている。

 

まさかの物入りの時のために。

 

それは正解だが、これは年代を問わず人類の知恵だ。

 

老人はこれに、これからフロー所得を大して稼げないという大いなる懸念が重なり、どうしてもお金の出費に慎重になる。

 

何故、大して稼げないと感じるのか。

社会の制度の問題もあるが、根底には、体力や記憶力の低下を自覚しているからだ

 

つまり、体力も気力も充実している人生上り坂の若者に対し、将来動けなくなったり、認知症になったりして、人の介護を受け、そして死んでいくしかないという下り坂の人生を自覚している自分との対比がある。

 

これからは人生100年時代と言われ、人の一生のうち、下り坂が格段に長くなる。

下り坂に入った時の人生設計は難しい

 

       

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tom's eye 104. 人間にしかできないことの解明

​今起こっていることは人類史上3回目の生産性革命だ。

 

1回目が農業革命。稲作によって飢餓から解放され、それ以外の生産活動に時間を振り向けることができるようになった。

 

2回目が機械革命。教科書にも出てくるように17世紀イギリスで始まった工場機械化によるモノづくりの劇的な生産性向上が起こった。

 

そして現在が3回目。IT(情報)革命と言われ、情報技術の革新によって、さらに生産性を引き上げることができるようになりつつある。

 

IT革命はこれからが本番で、AIの進化などによって、これから10数年でさらに劇的な変化が起るともと言われている。

 

こうした革命の意味は、人間の行ってきた仕事の下位部分を機械やAIが担う。

その分人間は余った時間をこれまでとは違う生産性を上げる意味のあることに従事し、価値を創出するということだろう。

 

ここからは自分の考えだが、

機械革命を人間の体力の代替、今回のIT革命を人間の知力の代替と捉えると、一体、人間の役回りとは何になるのだろう

 

人間にしかできないことに価値創出の源泉が移る。

人間にしかできないことの実相解明に向け、社会はこれからひた走る。

 

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​tom's eye 103. デジタル通貨は何をもたらすか

デジタル通貨と言うらしいが、いわゆるお金の電子化が加速している。

 

このような動きは、実は、現金決済主流の日本では遅く、中国のアリペイやインドのペイTMような新興国の方が圧倒的に速く実装化している。

ビットコインなど投機的なものも隆盛だが、日本でも遅ればせながら、メガバンクでも大同団結して実用化がテーブルに乗るなど、色々な主体が実装化に乗り出している。

いずれにしても、お金の電子化は、今後抗えない動きだ

 

現金決済との決定的な違いは取引きコストが劇的に減少し、送料無料、手数料無料など、多くの取引き者が経済的便益を得ることであるが、

 

もう一つのポイントは、取引きごとに記録が残るということだ。

 

IoTと並ぶ未来社会のビッグデータの源泉。

 

世界全体でマネーの流れが透明化し、よりスマートな社会が訪れる一方、

法人や個人一人ひとりの取引き詳細が捕捉され、言い訳が許されない状況も懸念される。

 

筆者の予測だが、家計にもキャッシュフローのような概念が出てくるのではないだろうか。

 

つまり、個人や世帯ののっぴきならない事情による支払い遅延などで、取引記録に傷をつけないように、有事の時のお金を絶えず用意し、それに当てるという発想や仕組み。

 

そのような保険も現れるだろう。

 

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tom's eye 102. ​​働き方改革は、働く場所改革でもある

アップルやフェイスブックは、オフィス内に広場や中庭を設けたりして、開放的な気分にさせ発想を促したり、平屋や低層階形式にして偶然の出会いを高めて効果を発揮しようとしている企業として有名だ。

 

しかし一方で、自分の居場所を決めて、パーテーションで仕切り、業務を遂行した方が集中力が高まり、結果、生産性が高まるという調査結果もある。

 

働き方の条件として、昔と決定的に異なるのは、場所に捉われずに働くことができるようになったことだろう。モバイルPCやスマホの一人一台が普及がそれを可能にした。極言すれば、対面打合せ以外の一人仕事はどこででもできるようになった

その代わり、自律的に業務を管理遂行することが求められる。

 

新しい働き方=働く場所が選べる環境下で個人が成果を発揮する最も重要な要素とは何だろう。

 

鍵はモチベーションにあると僕は思う。

 

誰も監視してない所で働くことは、創造性を育みやすいが、一方でなかなか業務に取り組もうとしない気持ちも芽生える。

言ってみれば、夏休みの宿題がなかなかはかどらないことを想像すればいいだろう。

 

そんな中でモチベーションをいかに持続させるかが個人個人の重要な要素になってくる。

厳しい社会になる。

 

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tom's eye 101. 一億総監視社会について

日本が一億総監視社会になりつつあることは前に述べたが、

でも、匿名性が担保できる状況では何をやっても大丈夫

地下鉄の車内で平然と化粧をしている女子を見ててそう感じた。

今時の子は本能的にそんなリテラシーを体得しているんだな。

 

僕の経験で言えば、中国人は生まれながらにそれを体得している分だけ有利かも。

 

 

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tom's eye 100. 発展途上国でカーシェアはどのような影響を与えるか(クルマの未来)

今、インドのバンガロールという新興都市に来ている。

ここでも、他都市と同じくそこかしこでウーバーのステッカーを貼った自家用車が走っている

 

経験して見たらわかるが、ウーバーは利用者側から見るとすこぶる便利だ。特に、旅行者や出張者にとっては気兼ねなく、色々な場所に行き来できる。そこの所は絶対善だ。

 

運転者側から見るとどうだろう。

多くの人の「タクシー運転手の個人事業主化」 か「配車サービスを生業としない個人の副業化」を促進している。

これが多くの雇用を生んでいることは確かだし、副業という儲け方をしていなかった人には+αの儲け口が現れ、以前より懐はあったかいことだろう。

 

しかし、いずれ需要と供給は均衡する。当然、ドライバー同士の競合が起こり、コスト競争も起こるだろう。

 

自動運転車化して、さらに生産効率を高めるという次のステップに行けるかというと、そうは単純にはいかないだろう。

 

何故なら、写真のように道路のインフラは全く整っておらず、雨が降ると冠水し、かつ交通ルールを無視したカオスな運転がはびこっているからだ。非常に高度な自動運転車ができない限り当分無理だ。

 

しかし、自動運転社会=スマート社会に向けての一番大きな阻害要因は、自動運転車=AIが普及し、多くの運転者の雇用を奪うという流れは、人口の多い新興国では決して容認できないことだろう。

 

その時はどんな社会になっているのだろうか。

 

結局は、生産効率は高いが、依然労働集約型の産業がそこにあるというだけかもしれない。

 

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